ネットワークビジネス(MLM)について記事を書いていると、「この会社は違法ですか?」という質問よりも、実際には「私はこう勧誘されたけれど、このやり方は大丈夫なの?」という問題に行き着くことが多くあります。
私自身もこれまで複数のネットワークビジネスの勧誘を受け、会社名や目的を最初にはっきり言わない誘い方、収入を強く印象づける説明、健康食品や美容商品の効果を強く語る場面などを見てきました。
MLM・ネットワークビジネスという仕組み自体が直ちに違法なのではありません。
確認すべきなのは、誰が、誰に、何を、どのように説明し、どのような契約をさせたのかです。会社が存在していることと、個々の会員による勧誘・広告・商品説明が適法かどうかは分けて考える必要があります。
- ネットワークビジネスは違法?まず最初に整理
- 特商法で規制される「連鎖販売取引」とは
- MLM勧誘で特に注意したい特商法の確認ポイント
- 「カフェに呼び出してからMLMと明かす」は大丈夫?
- SNS・DMを使ったMLM勧誘にも特商法は関係する
- MLMの商品紹介で薬機法上注意したい表現
- 「私はこれで治った」という体験談なら大丈夫?
- MLMのメール・DM勧誘|勝手に送っていい?
- 広告で「絶対稼げる」「誰でも成功」は大丈夫?
- MLMを契約してしまった後でも確認できる制度
- 「これ違法かも」と思ったら証拠を残す
- ネットワークビジネス勧誘の違法性チェックリスト
- ネットワークビジネスの法律についてよくある質問
- MLMは「会社が合法か」だけでなく「あなたが受けた勧誘」を見る
ネットワークビジネスは違法?まず最初に整理
日本では、一定の要件を満たすMLMは特定商取引法の「連鎖販売取引」として規制されています。「法律で規制されている=禁止されている」という意味ではありません。
一方で、連鎖販売取引には勧誘方法、広告、書面交付、電子メール広告、契約解除などについて細かなルールがあります。
「会社は長年続いている」「有名企業だから」という説明だけで、目の前の勧誘方法まで適法だとは判断できません。逆に、一人の会員の問題行為だけで会社全体について断定することも避けます。
特商法で規制される「連鎖販売取引」とは
連鎖販売取引では、商品等の販売や役務提供などの事業について、再販売・受託販売・販売のあっせんなどをする者を、特定利益が得られるとして誘引し、特定負担を伴う取引をするといった仕組みが規制対象になります。
典型的なMLMでは「人を紹介すると報酬が得られる」「参加・活動のために商品購入や登録料などの負担がある」といった要素が問題になりますが、実際の該当性は契約内容によって確認する必要があります。
MLM勧誘で特に注意したい特商法の確認ポイント
会社名・勧誘目的・商品等を明らかにしているか
連鎖販売取引の勧誘では、勧誘に先立って、統括者等の氏名・名称、特定負担を伴う契約の締結について勧誘する目的、商品または役務の種類などを明らかにするルールがあります。
利益について事実と違う説明をしていないか
「誰でも稼げる」「すぐ元が取れる」など、収益性について事実と異なる説明をすることは問題になります。報酬額を見せられた場合でも、商品購入、登録・維持費、セミナー、交通費などを引いた最終利益まで確認します。
費用や解約条件など重要な事実を隠していないか
登録後に毎月購入が必要だった、ランク維持条件があった、解約条件を説明されなかった場合は、契約前にどの説明があったのかを記録します。
威迫して困惑させていないか
長時間帰らせない、強い口調で契約を迫るなど、相手を威迫して困惑させる行為も規制対象です。
必要な書面を受け取っているか
連鎖販売取引では、契約前の概要書面と契約後の契約書面について規定があります。
「カフェに呼び出してからMLMと明かす」は大丈夫?
「久しぶりにご飯行こう」→ カフェで会う → 「実はビジネスをやっていて」→ 上位会員を紹介 → Zoom・説明会へ、という流れです。
重要なのは「カフェで話したこと」そのものではありません。最初から連鎖販売取引へ勧誘する目的だったのに、その目的等を明らかにせず誘い出したのかを確認します。
さらに、勧誘目的を告げずに誘引した相手を、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘することについても特商法上の規制があります。個室、自宅、事務所などへ移動した場合は、場所と経緯も記録しておくと確認しやすくなります。
SNS・DMを使ったMLM勧誘にも特商法は関係する
現在は、SNS投稿からDM、オンライン通話、説明会へ進む勧誘もあります。媒体がSNSになっても、勧誘の実態や契約内容を見るという基本は変わりません。
- 「副業に興味ありませんか?」
- 「自由な働き方を知りたくない?」
- 「人生を変えたい人だけDM」
- 「詳しい内容はZoomで」
- 会社名やMLMであることは後から説明
キラキラしたSNS投稿からMLM勧誘へつながるケースについては、こちらでも詳しく整理しています。

MLMの商品紹介で薬機法上注意したい表現
MLMでは、化粧品、サプリメント、健康関連商品などを扱うケースがあります。ここで「会社公式ではなく、私個人が言っているだけだから大丈夫」と決めつけるのは危険です。
薬機法66条は「何人も」と規定している
薬機法66条では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などについて、その名称、製造方法、効能・効果・性能に関する虚偽・誇大な記事を広告・記述・流布することを「何人も」禁止しています。
化粧品で認められる表現には範囲がある
商品区分や認められている効能の範囲を超えて、治療効果のように受け取られる説明をしていないか確認します。
健康食品・サプリは薬機法だけ見ればよいわけではない
一般的な食品・健康食品については、健康増進法などの表示規制も関係します。健康増進法65条は、食品の健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示を禁止しています。
「私はこれで治った」という体験談なら大丈夫?
体験談形式なら無条件で安全、というわけではありません。
- 「これを飲んで病気が治った」
- 「薬がいらなくなった」
- 「これで血圧が下がった」
- 「この化粧品でシミが消えた」
- 「医師も驚いた」など専門家の保証を連想させる表現
ただし、単語だけを切り取って「この言葉なら100%違反」と決めるのも正確ではありません。商品の区分、前後の文脈、広告該当性、承認・認証された効能などを含めて確認する必要があります。
MLMのメール・DM勧誘|勝手に送っていい?
連鎖販売取引の電子メール広告にはオプトイン規制がある
特商法では、消費者があらかじめ承諾していない限り、統括者、勧誘者、一般連鎖販売業者が連鎖販売取引電子メール広告を送信することを原則として禁止しています。
承諾や請求を受けて送信する場合には、その記録保存についても規定があります。消費者庁の特商法ガイドでは、最後に電子メール広告を送信した日から3年間の保存が必要と説明されています。
「メール」と「SNSのDM」を雑に同一視しない
電子メール広告に対する特商法上の規制、特定電子メール法、SNSのDMやメッセージアプリ上の連絡は、媒体・送信方法・内容・広告該当性によって確認すべき規定が変わります。
したがって、「知らない人からDMが来た=即メール規制違反」とは断定しません。ただし、DMから実際のMLM勧誘へ進んだ場合には、勧誘目的の明示など別の規制も含めて確認します。
広告で「絶対稼げる」「誰でも成功」は大丈夫?
報酬額、達成条件、必要な購入・活動費などを分けて確認すると、実際の利益を判断しやすくなります。
連鎖販売取引の広告では、表示事項が定められているほか、著しく事実と異なる表示や、実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示が禁止されています。
収益について見るときは「最高月収」や一部の成功例だけでなく、その数字が誰の、どの期間の、何を差し引く前の数字なのかを確認します。
「報酬が出た」と「最終的に利益が残った」は同じではありません。
MLMを契約してしまった後でも確認できる制度
連鎖販売取引のクーリング・オフは原則20日
連鎖販売取引では、法定書面を受領した日などを起算点として、原則20日間のクーリング・オフ制度があります。
クーリング・オフを妨害された場合
不実告知や威迫によってクーリング・オフをしなかった場合などは、単純に「20日を過ぎたから終わり」と決めつけず、消費生活センターなどへ相談する価値があります。
中途解約・返品のルールも確認する
連鎖販売契約には、一定の条件のもとで中途解約や商品販売契約の解除に関する規定があります。契約日、商品の引渡日、使用・再販売の有無などで扱いが変わるため、契約書面を確認します。
「これ違法かも」と思ったら証拠を残す
違法性を自分だけで断定するより、まず後から第三者が確認できる材料を残します。
- DM・LINEなどのメッセージ
- SNS投稿と投稿URL
- メール本文・送信元
- 勧誘された日時・場所
- 相手のアカウント名・プロフィール
- 概要書面・契約書面
- 報酬プラン・説明会資料
- 領収書・振込履歴・カード明細
- 商品購入履歴
スクリーンショットだけで終わらせない
画面だけでは日時やURL、前後の会話が分からなくなることがあります。可能なら前後の会話、日時、URL、相手のアカウントも一緒に保存します。
消費者ホットライン188へ相談する
契約や勧誘について判断に迷ったら、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センター等につながります。契約書や保存したメッセージを手元に置いて相談すると説明しやすくなります。
ネットワークビジネス勧誘の違法性チェックリスト
| 確認 | チェックする内容 |
|---|---|
| □ | MLMの勧誘だと知らされず呼び出された |
| □ | 会社名・勧誘目的・商品等が事前に明確でなかった |
| □ | 「絶対稼げる」「誰でも成功」などと言われた |
| □ | 費用・維持条件・解約条件を後から知った |
| □ | 断ろうとしたら強く契約を迫られた |
| □ | 概要書面・契約書面を受け取っていない |
| □ | 健康食品や化粧品について治療効果のような説明を受けた |
| □ | 承諾していない広告メールが送られてきた |
| □ | 「解約できない」と一律に言われた |
1つチェックが付いた=直ちに違法確定、という表ではありません。事実関係と適用される規定を確認する必要があるサインとして使ってください。
ネットワークビジネスの法律についてよくある質問
MLM・ネットワークビジネス自体は違法ですか?
それだけで違法とはいえません。一定のMLMは連鎖販売取引として特商法の規制を受けます。問題になるのは具体的な勧誘、広告、書面、契約などです。
友達にカフェへ呼ばれてMLMの話をされたら違法ですか?
場所だけでは判断できません。最初から勧誘目的だったのか、事前に目的等を明らかにしたか、その後どこでどのように勧誘したかなどを確認します。
サプリの体験談を話すだけなら薬機法は関係ありませんか?
一律には言えません。商品区分、表現内容、広告該当性などによって確認が必要です。「個人の感想だから何でもOK」とは考えない方が安全です。
SNSのDMは全部、未承諾メール規制の対象ですか?
全部を同じ扱いとは断定できません。電子メール、SNSのDM、メッセージアプリでは媒体や送信方法等が異なるため、具体的な事実関係で確認します。
20日を過ぎたら絶対に解約できませんか?
そうとは限りません。妨害の有無や中途解約等、別の制度が関係する場合があります。契約書面を持って消費生活センターなどへ相談してください。
MLMの説明で「Bになれる」「権利収入」といった言葉を使われた場合は、ESBIの記事でも収入の仕組みと最終利益の確認方法を整理しています。

MLMは「会社が合法か」だけでなく「あなたが受けた勧誘」を見る
ネットワークビジネスについて調べると、「この会社は合法」「この会社は何十年も続いている」といった説明を目にすることがあります。
しかし、読者が実際に確認したいのは、会社の存在だけではありません。
- 何の勧誘か最初に説明されたか
- 利益・費用について正確に説明されたか
- 必要な書面を受け取ったか
- 商品効果を過剰に説明されていないか
- 広告メールのルールは守られているか
- 契約後の解約制度を正しく説明されたか
会社が存在していることと、個々の勧誘が法律に沿っていることは別です。
「これ、おかしくない?」と感じたときは、その場で違法と決めつける必要はありません。まず証拠を残し、特商法・薬機法・広告規制のどこを確認すべきか整理し、必要なら消費生活センターなど第三者へ相談してください。


コメント